【STEP1】長期投資と分散の基本方針

日本では「物価は上がらない」というデフレ期が30年以上続きましたが、今や日本の消費者物価指数(CPI)は110%に上る勢いを見せています。
パンや電気代、コンビニのおにぎりまで値上げが相次いでおり多くの方がインフレを実感しているのではないでしょうか。それでも普通預金の金利はほぼゼロのまま —— この “見えない目減り” を放置すれば、実質的な資産は確実に痩せ細ります。
岸田政権が「貯金から投資へ」と新NISAを拡充し、非課税枠を1,800万円に引き上げたのも、家計がインフレ時代を生き抜く術として投資を後押しするためです。しかし、しかし投資初心者にとっては、2020年のコロナ急落でS&P 500が1か月で34 %沈んだ記憶や、東京市場の乱高下が「怖さ」を増幅させています。
そこで本記事では「インフレに負けないための最初の一歩」を日本の暮らしの実感に寄り添って解説し、データを味方にした分散とリバランスという王道を、初心者にもわかりやすい形で解説していきます。
1-1: 経済成長とインフレへの備え

インフレは静かな “税金”
インフレは物価を年2%ずつ押し上げるだけでも20年で現金の購買力を約1/3まで奪ってしまいます。各国中銀が「2%目標」を掲げるのは緩やかなインフレを容認し、企業や家計が “現金を抱える機会損失” を認識させるためでもあります。
▼インフレ率2%を想定した経過年数による現金の目減り率
経過年数 | インフレ率2%での現金価値 | 目減り率 |
0年 | 100% | 0% |
10年 | 81.7% | ▲18.3% |
20年 | 67.3% | ▲32.7% |
現預金だけでは利息がインフレ率を下回り、時間とともに実質価値が削れていきます。ゆっくりと目減りするため痛みを感じにくい —— だからこそ“静かな税金”と呼ばれるのです。インフレに負けないためには、実質リターンがプラスの資産を組み入れることが欠かせません。
株式は “成長参加券”
株式は企業利益と配当を通じ、世界経済の実質成長(年3%前後)を上回る5~7%のリターンが期待できる資産クラスです。市場全体に投資するインデックスファンドなら、個別企業選びの難易度を下げつつ広範囲に産業の成長を享受できます。
過去の暴落期でも、成長産業に伴い株価は長期で右肩上がりを描いてきました。近年の例だと2020年春に34%の下落幅を抱えたS&P500も、金融緩和と企業収益の回復により半年足らずで55%戻しています。
時間を味方につけることで “成長参加券” はインフレを超える力を発揮するのです。
債券は “ショック吸収材”
債券はクーポン収入と元本償還という仕組み上、株式より価格変動が小さく、下落相場のクッションとして機能します。
投資や融資などの元手となる資金を、一定の期間後に償還する(返却する)こと
米国投資適格債の期待リターンは実質 1~3 %程度ですが、ボラティリティは株式の 3分の1 程度にとどまることが多い点が魅力です。
株式と低相関の資産を組み合わせることで、ポートフォリオ全体の振れ幅を抑えられ、緩やかに収益を積み上げることが可能です。
1-2:単純な分散投資の限界

銘柄数 = 分散 ではない
最適な分散は「動きが異なる資産」を組み合わせたときに初めて機能します。
世界最大級の運用会社の一つバンガード社は「株・債権・代替資産」を「地域・業種・規模」まで広げることこそ真の分散と強調しています。
ただ銘柄数を増やすだけでは不十分であることを認識しておきましょう。
コロナショックの教訓
わずか33日で34%の下落幅を観測した S&P500 は広範囲なインデックスでさえ短期急落には無力であることが露呈しました。同時期に日本の Nikkei225 も年初来29%と急降下し、世界同時株安の相関上昇で「数だけ分散」が機能しない典型例となりました。
規律的に下落幅を抑えるには配分を整える仕組みまで設計してこそ、資産を守る運用ができると言えるのです。
業種偏りの実例
近年の米国株は「上位10社で時価総額の1/3以上」という大きなテック企業一極集中が進み、指数投資でも実はIT業種のバイアスがかかっています。表面的には分散しているようでも、分野ごとのリスクは共通しているためコロナショックのような場面では大きな影響に繋がりました。
初心者こそ「テーマが分かりやすい=安全」ではなく、まずは「複数業種・複数通貨・複数市場」へ“質の分散”を広げる必要があります。
1-3:安定収益を得るための「もう一工夫」

値動きを見える化
株価チャートを眺めるだけでは、銘柄の値動きは把握しきれません。
そこで役立つのが、値動きの大きさ(ぶれ幅)や一定期間ごとの平均リターンをグラフで表す方法です。数字とグラフを合わせて直感的に理解することが大切です。
動きの異なる銘柄の組み合わせ
データで値動きを確認したら、今度は値動きが被らない銘柄同士を組み合わせるステップです。
例えば株と債券を一緒に持つことで、景気の良いときは株の収益、逆風の時は債券が値下がりを抑えるシーソーの役割を持ちます。さらに株式の中でも国や業種で分けておくことで思わぬトラブル時のクッションとなる効果が期待できます。
本当の分散投資とは
株式と債券を組み合わせても、実はリスクが一国・一通貨に偏ることがあります。米国株と米国債だけだと、ドル安や米国固有のイベントで両方が揺れる恐れが残るためです。
- 業種を変える(テクノロジー×生活必需品)
- 国や地域を変える(先進国×新興国)
- 資産クラスを足す(金や資源関連のETFなど)
こうした “掛け合わせ” でクッションを何層にも増やせば、長期投資のアップダウンをぐっと抑えられます。
次の【STEP2】では、実際にデータを集めて読み解くための入門知識を専門知識がなくてもわかるように解説します。興味がある方はこちらからご一読ください。
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